Ultimate Hacking Keyboard というイキった名前のキーボードがある。真ん中からパカッと割れるタイプの分割型キーボードで、割ったところにアタッチメントとして拡張キーやトラックポイントなどを付けられるという、名前に違わぬUltimateなキーボードだ。
もともと2015年頃にクラウドファンディングで開始されたプロジェクトで、パッカーたちがキーボードを受け取れたのはなんと2019年……それも、予定されていたアタッチメントは付属せず、本体とパームレストのみが送られてきた。
ここだけ聞くとなんだか典型的な失敗プロジェクトみたいだが、面白いのがここからで、アタッチメントの発送の前にキーボードの新バージョンを発表した。それがタイトルにある V2 だ。V2は2020年11月ごろに発表され、自分は2021年2月ごろにオーダーした。
さて、今は2022年1月の終わりである。オーダーから実に11ヶ月を経て、ようやくこのキーボードは自分の手元にやってきた。まだ2日ぐらいしか触っていないが、すでに 𝓔𝓷𝓭 𝓰𝓪𝓶𝓮 の予感がしている。
特徴
アタッチメントとトラックポイント
一番目を引くのは、上述したアタッチメントによる拡張だろう。ポインティングデバイスとして以下の3つが用意されている(本体と別に購入する必要がある)。自分はトラックポイントを選択した。
トラックポイントを搭載したメカニカルキーボードは非常に少なく、台湾 TEX Electronics 社の製品や ARCHISS Quattro TKL ぐらいだ。
トラックポイントを採用するデバイスでは、多くの場合真ん中のボタンでスクロールが出来る。UHKの場合は、レイヤーによってトラックポイントの挙動を変えられる。
- Baseレイヤー: ポインタ移動
- Modレイヤー: スクロール
- Fnレイヤー: カーソル移動
Fnでカーソル移動出来るのが面白い。広範囲をカーソル移動するのにぴったりだ。欲を言えばShiftと同時押しで文字列選択が出来ると良かったのだが、そこまでは対応していないようだった(勘違いだったら教えてほしい)。
トラックポイント、シンプルなデバイスに見せかけて、たまに質の悪いものに当たることがある。止めたい場所でうまく止められなかったり、軸がブレていてフラフラ動いてしまったりする。本家本元のThinkPadでも安めのモデルだとあんまり操作感が良くない(※個人の感想です)。
これまた主観だが、本機のトラックポイントは非常に質が良いと感じた。止めたいところでピタッと止まるし、力を込めればたくさん動かせる。残念ながら、現時点ではポインタやスクロール速度の調整には対応していないようだ。自分はOS側の設定で調整している。Macの場合は、トラックパッドとマウス(トラックポイント含む)の設定は異なるので、Magic Mouseなどを使っていない限りはこれで特に問題ない。
ところで、トラックポイントにつきものなのが ドリフト だ。これは「触ってないのに勝手にポインタが動く」現象で、トラックポイントの構造上どうしようもないものとされている。筆者のUHKでも数回起きているが、ThinkPadなどの他のキーボードと同様、しばらく触らなければ勝手に直る。
ちなみにUHKのFirmWareにはドリフトに関するIssueが立てられており、そのうち根本解決するのかもしれない。前述の通り、ドリフトはこれまでトラックポイントにはつきものの悩みだったので、もしファームウェアレベルで直せるのであれば革命的な気がする。
配列
配列はいわゆるRow-Staggared、普通のキーボードと同じものだ。ちょっとおもしろい点として、スペースキーの下にもスイッチがついている。ここはキーボードのスイッチとは異なり、マウスのようなカチカチとしたスイッチだ。少し固めなのであまり使う機会はないが、マウスの右クリックをアサインしている。
レイアウトはUHK Agentというデスクトップアプリケーションで変更できる。さほど変わったところはないが、設定を直接ファームに書き込めるのが非常に便利だと感じた。他社のものだとクライアントがWebベースで作られていて、直接ファームの書き換えとかまでは出来ないことが多い。その場合はWebから設定ファイルをダウンロードして、別のデスクトップアプリでファームを書き換えることになる。特に使い始めのころは、試行錯誤しながらレイアウトを頻繁に書き換えることになるので、手数が少なくてすむのは純粋にありがたい。
キーキャップとキースイッチ
キースイッチはCherry互換のものが使える。購入時にいくつかの選択肢の中から選べるが、PCBソケットがついており、購入後に交換することもできる。
キーキャップは刻印ありのものとなしのものが選べる。もちろん購入後に好きなものを選んでもいい。
余談だが、キーキャップの手触りがすごく良い。どうやらPBT Double-shotらしいのだが、そこそこ厚めに作られているらしく(測ってないけど)、かなり好感触。
打鍵感
良い。安物のメカニカルキーボードにありがちなバインバインとした反響音も無く、タイプしていてとても気持ちいい。
スイッチ以外にキータッチに影響する要素を良く知らないのだけど、プレートが金属(多分)なのが関係してるのだろうか?
何でこんなに時間かかったの?
冒頭で述べたように、オーダーから到着まで1年近くかかっている。量産体制がなかなか整わなかったり、半導体不足のあおりを受けたり、試作品の品質に満足行かなかったり、という理由のようだ。これまでの経緯はブログに記載されているが、金型からキーキャップまで、かなりのトライ&エラーを繰り返している。
充分な試行錯誤を経たこともあってか、出来上がってきた製品の品質は非常に高かった。使っていてストレスを感じるところがほとんどない。 上述のトラックポイントの使用感の話も含め、かなりこだわって作られているのではないかと思う。
ちなみに、今注文すると5月ぐらいに届くらしい(ホントかよ)。欲しい人は早めに注文しておくと、忘れた頃に届くと思う。ちなみに、V1は最終的には注文から1週間ぐらいで届くようになっていたらしいので、V2も量産体制が整えばそのぐらい早くなるのではないかと思う。
まとめと所感
これまで使ってきたメカニカルキーボードの中ではいちばん良かった。長く使えそう。