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ブリリアント・ジャークと戦う秘訣

TL;DR

戦うな。仲良くなれ。

ブリリアント・ジャークとは

ググれば出てくるだろうし、ググらなくても日に3回はTLに挙がってくるのでまあ知らない人も居ないだろうが、要するに職場に一人はいる「仕事は出来るがイヤなやつ」のことを言う(らしい)。Netflixの組織論の本に書いてあったという話を聞いた。まあ、ここまで読んで察してほしいが、要するにおれはこの言葉についてノーアイデアだ。定義を気にする人はここでこの記事を読むのを止めてもらいたい。

イヤなやつについて

人間なら誰しも嫌いなやつの一人や二人いるだろうし、何気ない一言に傷つけられたこともあるだろう。コミュニケーションは難しい。何しろおれたちは言語という途方もなく曖昧で暗黙的なものに依存してコミュニケーションしている。明示的?いや、暗黙的だ。

唐揚げ。

いまどんな形を連想した?断言するが、唐揚げと言われて同じ形を連想できる人間は居ない。唐揚げは不定形で、衣の付き方によって形が変わる。にもかかわらず、おれたちは唐揚げが同じものを指すと思っている。これはある種の共同幻想だ。

例えばおまえが「このハゲ」と言われたとしよう。お前は内心こう思うはずだ。「なぜこいつはおれの10円ハゲを知ってる?隠していたはずなのに。いや、仮に知らなかったとして、おれをハゲ呼ばわりする筋合いは無いだろ?なんて嫌なヤツなんだこいつは、ヤな奴ヤな奴ヤな奴!」

だが、お前をハゲ呼ばわりしたやつはおまえの10円ハゲのことなんかに気づいていない。それどころか、お前に好感を持っている。気さくなコミュニケーションのつもりで「ハゲ」と呼んでいる。つまり、お前とその「イヤなやつ」の間には「ハゲ」という言葉の意味においてディスコミュニケーションがある。

おまえは上司にこのことを密告することができる。「あいつにハゲって言われました、すごく傷つきました」。上司は優秀な部下であるお前を守るために行動するだろう。そしてその「イヤなやつ」は「はあ、すいません。うちの地方ではハゲって言うたらまあちょっとポカやらかした人のことを指すもんですから」。

おめでとう、お前はもうハゲ呼ばわりされることは無いだろう。満足か?

ディスコミュニケーション

ところで、おれは過去にハラスメント行為を直接注意されたことがある。同僚を理詰めにしたのだ。「なんでそう考えるんですか?」「それとこれって矛盾してませんか?」こう聞き続けたところ、それをロジハラ(ロジックハラスメントの略らしい)だと当人から文句を言われた。

はっきり言って心外だった。おれがなぜその同僚を理詰めにしたかといえば、その同僚が何を言ってるかさっぱり分からなかったからだ。別に嫌いなやつなら「あ、そうですか、はい」で終いだ。だがおれはその同僚のことをよく理解したかった。だから聞いたのだ。聞いただけなのだ。そいつの考えを理解するために、ベストな質問を考えて、聞いたのだ。言い換えれば、おれはその同僚をリスペクトしているからこそ、考えを理解したくてそうしているのだ。それに、質問が誰かを傷つけるなんて思ってもいなかった。

「先生、質問があります」と言って「なんで質問があるんだ!おれの授業が分かりにくいっていうのか!」と怒り出す先生をおれは見たことがない(まあ、いるかもしれんが)。同じように、Akinatorに「なんでそんなに質問してくるんだ!」とキレ散らかすやつを見たこともない。だが、おれたちの間ではそれが起きた。で、おれはその同僚に伝えた。「おれが質問するのは、お前の考え方を理解したくてしてるのであって、お前を傷つけたり追い詰めたりするためじゃない。そこだけは理解してくれ」と。これはどうやら効果があったようで、納得してくれたし、それからのコミュニケーションはスムーズに進んだと思う。

発話と、その受け取り方について

おい、そこのハゲ。聞こえてるかハゲ?頭髪だけじゃなく耳も不自由なのか?

別に読者を罵倒したくて記事を書いてるわけじゃないんだが、説明のためなのでそこは分かって欲しい。

いずれにせよ、おれに悪意はなかった。ハゲ呼ばわりしたのは、ひとえにおまえと仲良くなりたかったからだ。コミュニケーションにクセがあるのは認める。だがおれはおまえと仲良くなりたかったし、こういうことを言っても良い間柄だと思ってたんだ。お前がそこまで怒るとは思ってなかった。悪かった。二度としないよ。

こう言われれば、まあ納得はしないまでも、そいつのことを理解できたと思うんじゃないか?嫌な気持ちも薄れるんじゃないか?

……ブリリアント・ジャークなんて呼ばれるような奴が仮にいたとする。そいつがどんな嫌なことを言ったとしても、その言葉がお前を傷つけたりする意図で放たれたとは限らない。そいつはただ、自分の正しいと思うことを主張しただけかもしれない。言うべきことを言っただけかもしれない。お前と仲良くなりたかったのかもしれない。ただ不器用なだけなのかもしれない。で、お前はそいつに「ブリリアント・ジャーク」とレッテルを貼って、それで終わりにするのか?そいつは仕事が出来るし、良いやつかもしれないのに?

ブリリアント・ジャークは組織に必要ない」なんて言ってのけるのは、ジャイアンをいじめっ子だと断罪して転校させるようなもんだ。映画版を見れば、あいつが情に厚い真の男だということが分かるはずだが、その学校は劇ドラを見ずにジャイアンを理解したつもりでいる。ジャイアンの居ないドラえもんが面白いか?バイキンマンの居ないアンパンマンが面白いか?

言葉はただの言葉だ。その後ろに何を感じるかはお前の問題だ。大事なのは、そいつを排斥することじゃなく、理解して、仲良くなることだ。違うか?